学校図書館にはどのような情報技術(ICT設備)が求められているのか?:利用者のニーズから

片山ゼミでは毎年学生が考えたユニークなテーマにチャレンジしています。今年のテーマは「学校図書館にはどのような情報技術が求められているのか?:利用者のニーズから」でした。

以下、研究の成果をご覧ください。なお、ログインすることで、学生による10分間説明動画もみられます!

1.研究目的 
2019年12月、文部科学省はGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想を打ち出した。2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大を受け、GIGAスクール構想を早期実現する必要性も示されている。

このような教育の流れのなかで学校における学習情報センター機能が求められる学校図書館は、どのように変化し、対応すべきなのか。

本研究では学校図書館の利用者のニーズを明らかにし、学校図書館がまずどのような情報技術を整備していく必要があるのかを考察したい。

2.研究方法 
本研究では利用者のニーズを明らかにするために利用者へのwebアンケート調査を実施する。本来学校図書館の利用者は小学校、中学校、高等学校の児童生徒であるが、親戚等が通う中学校、高等学校に調査依頼したところ、Webアンケートは認められなかった。

そこで高校生に一番違い年齢である、大学1年生に対しGoogleフォームを利用したWebアンケート調査を実施した。調査期間は2020年10月19日(月)から23日(金)であり、聖徳大学の1年生を対象とする授業において実施してもらった。また、機縁法によって中学生2名、高校生1名に対してインタビュー調査を実施し、アンケート調査を補足した。

【アンケート内容】
「利用目的・利用頻度などによって必要とする情報技術が異なるのではないか」という仮説を立て、学校図書館の利用頻度や利用目的、学校図書館に現在導入されている情報技術・設備、そして求めている情報技術・設備について、選択肢を設けて質問した。また、学校種、学校図書館のおおよその規模や携わる職員数などによっても違いがあるのではないかと考え、それらについても問うた。


Googleフォームで実際の様子を確認したい方はこちらのリンクから。
回答によって分岐しますので、気になる方は実際に回答してみてください。ただし、回答されても今回の調査結果には反映されません。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdUuZwEAJZnEPIA630N0ed9xHZmtU3gsU2xBxollRvWRRqVgw/viewform?usp=sf_link


【アンケートの質問事項】
・所属学科
・学校種(私立か公立か国立か)
・学校図書館の開館曜日と時間
・学校図書館の広さ(通常教室のおおよそ何個分か?)
・学校図書館に関わる教員・事務職員の人数と常駐していた教員・事務職員の有無
・自主的な学校図書館の利用頻度と目的
・授業での利用頻度
・授業外での学校図書館での調べものの頻度
・生徒が利用できるOPAC(図書館資料等を検索できるコンピュータ)の有無
・生徒がインターネットに接続できるインターネットの有無
・図書館資料の探し方
・データベースの有無
・学校図書館のWebサイトの有無と掲載されていた情報
・ペッパー等のロボットの有無とその使われ方
・学校図書館にどのような検索設備があるか
・どのようなIT(情報設備)があるか
・電子書籍、電子マガジン等の提供の有無
・学校図書館に導入されていたサービスの種類
・高校時代に必要不可欠だ(あったら利用していた)と思った情報技術・設備
・高校時代に最もデジタル化が進むべきだと思う情報技術・設備
・公立図書館の利用頻度
・日常的に利用していたメディア

3.調査結果 

❶ 調査協力者
Webアンケート調査に回答したのは全126名で、文学部51名(40.5%)、児童学部35名(28.6%)、看護学部18名(14.3%)、音楽学部13名(10.3%)、心理・福祉学部8名(6.3%)であった。

❷ 学校図書館に必要だと思う設備上位3位!

1位「図書館の資料を検索できるコンピュータ」
2位「自動貸出機」
3位「予約・リクエストをインターネットを通じて行う仕組み」
   「バーコードを読み取る方式の貸出手続き」となった。

学校図書館に必要だと思う設備

❸ 学校図書館の利用頻度と利用目的

学校図書館の利用頻度

月に1回以上自主的に利用する人は全体の約47%程度、さらに授業で利用される頻度は低く、また、学校図書館で調べものをする人も少ない

❹ 学校図書館での資料の探し方

資料探索方法
資料を探す際、コンピュータや目録などを使わず(あるいはコンピュータなどが無く)自分の目で見て探す人が多い!

❺ 学校図書館での電子書籍等の提供

提供されている資料
学校図書館での電子書籍、電子ジャーナルの提供はほとんどない。電子書籍等の提供をしている図書館は1割に満たない。

ここからは、クロス集計結果について述べます。まずは、仮説にかかわる学校図書館の利用頻度・目的によって学校図書館に求める情報技術が異なるのかを見ていきます。

❻ 授業での学校図書館利用頻度×学校図書館でデジタル化がすすむべきと考える部分

  • 利用頻度を問わず、「検索環境の充実」を望む声が多い
  • そのほか「最新の情報環境を提供する施設設備」「自宅などから図書館サービスにアクセスできる環境」「人を介さずに貸出等ができる効率化」の希望がまんべんなく複数に希望されている
  • 最も利用頻度の高い層は電子書籍・電子マガジンの充実を望んでいない
  • 比較的利用頻度の高い生徒は「個人デバイスで自宅などから図書館にサービスにアクセスできる環境」を求めている割合が高い

学校図書館の利用頻度

❼ 自主的な学校図書館利用頻度×デジタル化が進むべきと考える部分

  • 利用頻度を問わず検索環境の充実が望まれている
  • 比較的利用頻度が低い方が「人を介さずに貸出等ができるサービス」や、「オンラインで友人同士の交流できるようなサービス」を望んでいる利用頻度の低い層は日常の延長上にある友人同士のコミュニケーションを介した図書館利用には魅力を感じている。一方で、学校司書、司書教諭などとの新しい関係構築には消極的。
  • 最も利用が高い層は全般的にデジタル化を望まない傾向にある(しかしNが少な目なので個人差の可能性あり)

自主的な図書館利用

 

❽ 学校図書館の利用目的×学校図書館でデジタル化がすすむべきと考える部分

  • 利用目的にかかわらず「検索環境の充実」を望む人が一定数多めにいる
  • 利用目的にかかわらず、自動貸し出し機などの効率性を望む声がある
  • 利用目的が自習、授業中の調べ学習などの場合、「オンラインで友人同士が交流できるような図書館サービス」を希望する数が増える。→相談しながら学習したいというニーズがあるといえる
  • 調べものにかかわる利用層では、「自宅などから図書館サービスにアクセスできる環境」を望んでいる

学校図書館の利用目的クロス

ここからはインタビュー結果!

【高校2年生男子】
利用頻度:月に2,3回程度。授業では半年に1,2回程度。
利用目的:主に興味関心に基づく図書の利用。
学校図書館に望む情報環境:
・図書館内の資料を検索できるコンピュータ
・わからないことを聞いてくれるロボット
・3Dプリンタの提供
・個人のスマホやタブレットから学校所管サービスにアクセスできる
検索環境の充実が最希望

理由
・資料の場所について入学後の1度しか説明がないため、どこになにがあるのかわからない。
・開館時間が短い中、目当ての本にたどり着くまでに時間がかかる。

3Dプリンタは、興味はあるけど、自分で使える機会がないから。
・行きたい時に図書室が空いていないことが多いから。 

【高校1年生男子】
利用頻度:個人的に利用することはない。授業での使用は一度のみ。
学校図書館に望む情報環境:
既存のもの
図書館の資料を検索できるコンピュータ
・インターネットに接続できるコンピュータ
理由は
 ①素早く探しているものを見つけたいから
 ②インターネットを利用して調べたいため
今はないけどあったら嬉しいと思うもの
・電子書籍
・貸し出し履歴からオススメの本を紹介してくれるシステム
・最もデジタル化が進むべきなのは人を介さずに貸し出し等ができる事
理由は
 ①どこでも手軽に読みたいから
 ②似たような系統のものを簡単に知りたいから
 ③理由は時間短縮のため。

【中学1年生女子】
利用頻度:週2~3.授業では月1程度。
利用目的:主に興味・関心に基づく図書の利用。
学校図書館に望む情報環境:
既存のもの
・今ある中で必要不可欠なものはバーコード読み取り方式の貸出手続き。
・理由は貸出機はないと、かりることができないし、バーコードより、短時間で簡単にできるから。
あると嬉しいと思うもの
検索環境を充実させること→1番デジタル化が進むべき
・インターネットに接続できるコンピュータ
・自動貸出機
・タブレット端末の貸出
・予約、リクエストなどをインターネットで行える仕組み
理由は
①検索環境を充実させれば、借りたいものがより多く見つかる気がするから。
②インターネットがあると、様々なことができるようになるから。
③バーコードの貸出よりも簡単に出来ると思ったから。
④図書館で自習などする時に使えるから。
⑤自分の欲しい本が予約すれば、いつかりられるかがわかるから。

4.考察:仮説の検証

仮説:利用目的・利用頻度によって必要とする情報技術が異なる
結果として、利用頻度や利用目的によって仮説の検証によって求められる情報技術は違う側面があり、その点では仮説は指示された。一方で、単純集計、クロス集計、インタビュー、共通して、情報検索技術の充実が望まれており、仮説は以下のように止揚された。

仮説の止揚:利用目的・利用頻度によって必要とする情報技術が異なる面があるが、「情報検索技術の充実」については利用目的・頻度にかかわらず求められている

過去のポスター
2019年:https://www.libraryfair.jp/poster/2019/8935
2018年:https://www.libraryfair.jp/poster/2018/7189

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