日本電子出版協会は、国に対して全国をカバーするクラウド型小中学校デジタル図書館を要望しています。
文部科学大臣
盛山 正仁 様
一般社団法人日本電子出版協会
会長 松田 真美
小中学校向け
学校デジタル図書館に関する要望書
一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)は、37年前に、当時黎明期にあった日本の電子出版の発展を目指し設立されました。特定の業界に偏らないオープンな団体であり、出版社、メーカー、ソフトハウス、印刷会社、プラットフォーム会社などが集まって、常に10年後の世界を見据えた提言や技術仕様の標準化などを行っています。業界の反対を押し切って標準化を行い、今では世界標準になったEPUB3(イーパブ)フォーマット等の大きな実績もあります。
JEPAでは、かねてより全国の小中学校の地域格差、情報格差を解決する学校デジタル図書館について検討してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響下での児童生徒の学習活動支援のために議論を加速し、このたび以下をまとめ、文部科学大臣に要望いたします。
要 望
1.国は小中学校児童生徒1人1台の端末整備に合わせて、学校や家庭から同時アクセス無制限、読み放題の学校デジタル図書館サービスを提供する。
2.小中学校の児童生徒や先生向けに出版された多様なデジタル本、紙の本は読めない子どものためにアクセシビリティに配慮したデジタル本、母国語が日本語ではない子どもが読む外国語のデジタル本を提供する。
3.利用料を全額、国の負担とする。
要望の背景
文部科学省の学校図書館図書標準は、児童生徒数によって揃えるべき蔵書数を決めています。都会の大きな学校では蔵書1万2000冊、離島、中山間地域等の小さい学校は2400冊と、読める本の数に格差があります。加えて図書室を使えない夜間中学の生徒、海外の日本人の子ども、日本に住む母国(語)が日本(語)ではない子ども、紙の本は読めない子ども、読みたい本の買えない地方の子どもや収入の少ない家庭の子どもを含めると、情報格差はさらに拡がります。
1993年(平成5年)以来、何度も「学校図書館図書整備等5か年計画」を策定して、各自治体の予算に上乗せした地方交付税措置により本の整備を進めてきましたが、達成率は小学校で66%、中学校で55.9%に留まっています。
一方、コロナ禍を機にGIGAスクール構想が加速され1人1台の端末環境が整備されました。しかし、児童生徒が1人1台PCを持ち、教科書がデジタル化しても、参照したい学校図書館にある図書資料は紙のままで良い筈はありません。また、無防備に児童生徒が直接、ネット上の雑多で危険な大人向け情報にアクセスするのを避けるためにも、先ずは、学校デジタル図書館内の電子書籍、辞書、百科事典、地図、統計資料、郷土資料、海外出版物などの、豊富で質の高いコンテンツを参照したり、学校デジタル図書館の資料をゲートウェイにしてネット上の元資料へアクセスするなど、多様なデジタル情報にアクセスするスキルを児童生徒に教えなければなりません。
学校デジタル図書館は建物も不要で、全国に1つのクラウド型学校デジタル図書館があれば何万冊でも提供でき、地域格差、情報格差は解消されます。地方交付税措置ではなく、文科省自身が直接、全国の小学校20,000校、中学校10,000校や家庭から同時アクセス無制限の読み放題の学校デジタル図書館サービスを提供し、利用料を全額、国の負担としてもらうことで児童生徒にとって公平なサービスになります。デジタルは1つあれば済む世界です。義務教育用ベーシックインフラとして世界に先駆けて文部科学省が1つ作るのです。1つであれば、データ管理も混乱しません。
一般社団法人 日本電子出版協会 〒112-0004 東京都文京区後楽2-21-12 301 TEL:080-5823-6872 E-MAIL: info@jepa.or.jp |