国立国語研究所に対してどんなイメージをお持ちですか。
学生の時に勉強した「国語」に関する研究をしているイメージが強いのではないかと思います。
そんなイメージを言われる研究所ですが、実際はこんなことをやっている例を過去の研究資料から一部ご紹介します。新たなイメージができるかもしれません。
研究資料は研究結果のそのものもありますが、その結果が出る過程に使用したもの、一次資料や二次資料と呼ばれるものも含まれています。中には研究時に使用した道具も。
一次資料や二次資料となる書籍については、研究図書室で配架しているので、一般の方も閲覧や貸出、ILLもご利用ができます。もちろん、研究者の方の研究利用も大歓迎です。
それでは、読みたいところに急ぎたい方はこちらから。
ー目次ー
~ 資料のご紹介 ~
- 資料1 記録分類に使用したカードはブックカードに似ている!?
- 資料2 実は、戦後~90年代の雑誌が一部残っています。
- 資料3 地元の方言を探してみませんか?
- 資料4 映像では、研究者が体を張ったX線映画
- 資料5 音声の記録の歴史を感じる!?
~ 研究資料室のご紹介 ~
過去に行われた方言や言葉の調査研究では、聞き取りに使用した調査票や雑誌から記録カードに「ことば」を記入しました。そして、そのカードを分類して、棚の引き出しに入れて保管をしていました。
ひと昔前に主流だった図書館 のブッカーカードの目録と同様のことを行っていました。
研究資料室のカード保管庫


この引き出しには「その仕事はおれにまかせろ」と書かれています。「まかせる」という枠組みの内、「仕事をまかせてほしい時にどのように言うのか」の回答のカードを集めた引き出しです。回答や回答地点はブックカードに似た調査カードに記載されています。この時の回答はローマ字で記入されています(この場合は「makasero」が該当します)。ものによっては発音記号も記載されています。この引き出しの中には、「makasero」の他にも「makase」、「makasi」、「makaseyo」など様々な回答のカードが入っています。
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各図書館では毎年雑誌の購入はされていますが、保存スペースや本のコンディション等の関係で、ある程度の期間が過ぎると除籍や廃棄されてしまっているところが多いと聞きます。意外と専門誌の雑誌は残っていることが多いですが、大衆紙(オール読物、週刊少國民、主婦の友、週刊朝日、週刊サンケイ、明星など)は、年代によっては雑誌は残っていないことが多いです。ほぼ1945年以降のものになりますが、自館で見つからないなと思ったときは、研究図書室で検索してご利用ください。すべて網羅しているわけではありませんが、目的の雑誌が見つかるかもしれません。
これらの雑誌が残っていることには、理由があります。過去に行った研究「雑誌の語彙調査」の時に雑誌を収集しました。その収集した雑誌ですが、必ず同雑誌を3冊収集し、その内の2冊は言葉や文章を切り取って、ブックカードに似ているカードの両面に貼り、残りの1冊は保存用としてそのまま保管しました。そのため、残りの2冊は元の形では残っていませんが、1冊は残っています。
また、過去の研究資料ではこんなケースも。
「プレイボーイ」の昭和51年の記事の「仲間を一歩リードする東京弁1週間マスター法」※では、国語研究所の研究者にインタビューしながら方言の話を進めています。九州では物を片付けることを「なおす」というのですが、「本をなおしておいてくれ」と言われて、九州から東京に来た若者が、東京では本を修理するという意味になるので、「エッ?」となった話などが紹介されています。言葉のセレクションは、やはりプレイボーイならではの男女関係でのシチュエーションも含まれています。この資料はこの記事だけの研究資料で、本誌は所蔵していません。
参考資料
※「仲間を一歩リードする東京弁1週間マスター法」『Weeklyプレイボーイ』第21巻,14号,pp.73-75.
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『日本言語地図』をご存じですか。
『日本言語地図』(1966年〜1974年刊)は、全国各地の方言の語形・発音を項目ごとに表示した地図集です。「日本言語地図作成のための調査」の研究で作成されました。この地図は、ある単語を選び、その単語が全国でどのように分布をしているのかを調査して、方言地図にしました。また、共通語(東京の言葉)が各地の方言へ与える影響を明らかにすることも目的としました。
たとえば、かたつむり。
(「かたつむり」の地図のリンク先で拡大できます。)
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現在のデジタルアースマッピングを使用すると、このような表現もできます。
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このサイトでは「かたつむり」の他に8つの言葉を取り上げています。
興味のある方は上のサイトで、地元や故郷では何と回答したのか確認してみてください。
スマートフォンご利用の方はリンク先で、横画面でご覧ください。
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非常にめずらしいX線で撮影された映画で、数分で終了します(リンクからご覧いただけます。)。映画というより、実験を撮影したそのものと感じるのではないかと思います。レントゲン写真の中の人が口を動かして発音している動画のイメージです。「国語」というと文系のイメージがありますが、発音の研究もあることから「音」という理系の実験系の研究も行っています。この研究は、「調音運動の実験音声学的研究」で、発音する時の口の中の動きを調べるためにX線を使用してデータの取得を行いました。実験当時は現在のような被爆量等の基準が浸透していなかったので、後で知ったことを被験者でもある研究者は述べています。今では同条件での撮影は難しく、MRIを使用してデータを取得しています。
MRIのデータベースを公開しています。
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これらは研究で音声の記録に使用した機器です。古い順に並べてみませんか。
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それぞれの実験や実地調査では、音の分析に使用するだけでなく、話した内容と状況の記録としても録音機材は重要な研究アイテムでした。
保管している研究資料には、
音声では、オープンリール(音声)、カセット、DAT、LPレコード、CD、MiniDisk(MD)。
映像では、オープンリール(映像)、8㎜フィルム、16㎜フィルム、8㎜ビデオ、LD、Uマチック(U規格VTR)、βマックス、VHS、miniDV、DVCAM。
他にも記録用の写真、ガラス乾板、マイクロフィルム、FD、MOからHDD、USB、LTOテープなど様々です。
資料の年代によって、音声や映像も記録される媒体が変わります。
現在、それらの資料のデジタル化を進めています。
昔からあるのに意外と生き残っているのが、カセットテープです。現在でも再生機器は販売されています。
割と歴史が浅いMDでも、今は機器の製造が中止になっているので、研究資料室ではMDを収集をしたらすぐにデジタル化を行っています。
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収蔵されている研究資料の一部をご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか。
国立国語研究所では、こんな研究が行われています。
主な研究内容
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日本語の語彙や文字・表記
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日本語の発音や文法の法則
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日本語の歴史
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日本各地で使われている方言・言語
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場面や状況によることばの使われ方
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他の言語と日本語の違い
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母語としない人の日本語学習
最後に、研究資料を保管している研究資料室と研究資料室収蔵資料データベースと研究資料の利用方法のご紹介です。
研究資料室の概要と収蔵資料のご紹介です。
研究資料は、カード・書誌・紙資料などの紙媒体、カセットテープ・ビデオテープなどの音声・映像、フロッピー・CD・DVDに情報を保存したデジタル媒体、その他では音声記録機器・算盤・ガリ版などの資料があります。
国立国語研究所(東京都立川市)では100以上のデータベースや資料を公開していますが、その一つに「研究資料室収蔵資資料データベース」があります。

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以下の二つからご利用ください。
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研究資料の閲覧・利用の申込
→→研究資料室のページから
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共同利用型共同研究の申請
→→詳細はこちらのページから
他にも研究文献を調べたい方へ
-
日本語研究・日本語教育文献データベース
→→詳細はこちらのページから
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国立国語研究所学術情報リポジトリ
→→詳細はこちらのページから
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国立国語研究所研究図書室
→→詳細はこちらのページから
現在、共同利用型共同研究の応募を受け付けています。
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②1976年 2番 ‥‥STEREO CASSETTE-CORDER 型番:TC-2220
5番 ‥‥ラジオカセットテープレコーダー 型番:No.RQ-332
④1980年 7番 ‥‥カセットレコーダー 型番:TC-D5M
⑤1995年 3番 ‥‥VORステレオカセットレコーダー 型番:TCS-90
⑥2003年 1番 ‥‥ポータブルMiniDiskレコーダー 型番:MZ-B10
⑦2007年 6番 ‥‥voice trek (デジタルのみ) 型番:DS-60
①→→→→→→②③④⑤→→→⑥→→→→⑦
