【趣旨説明】
現在の機関リポジトリは、オープンアクセスや研究データへの対応など複雑な要件に応えるために多機能なアプリケーションとなっています。しかしこのため、アプリケーションの開発や維持、データ移行の複雑さという問題が発生しています。機関リポジトリの本来の目的である「研究成果への持続可能で永続的なアクセスの保証」に対するリスクとなっています。日本において多くの機関が利用しているJAIRO Cloudのシステム移行時においては担当者がかなりの時間と労力を割いて対応せざるを得ず、また一時的にせよ「永続的なアクセス保証」の実現が難しい状況に陥る事例もありました。 また、各機関の研究成果のショーケースともなるため、工夫を凝らした機能を要求するあまり、本来の目的が脅かされるという本末転倒な状況も発生しているようです。小規模機関のみならず大規模機関でも人員不足やジョブローテション等により、リポジトリ業務に関する知識やノウハウの継承も困難になっています。研究データの公開基盤としての役割を求められ、さらにオープンアクセス加速化によりさらに業務量も多くなることが予想されます。増え続ける莫大な量の本文コンテンツとメタデータを適切にバックアップを取り、維持管理することはさらに難しくなるでしょう。
このような状況を打破するべく、大学図書館研究会 学術基盤整備研究グループでは有志により「持続可能な機関リポジトリ」を実現するための、最低限必要な機能とは何かを検討し、機関リポジトリ構築用アプリケーション “Togura”(とぐら、鳥座)を開発しました。 “Togura”(とぐら、鳥座)は、JAIRO CloudやDSpaceのようなサーバーとして動作するリポジトリソフトウェアではなく、静的HTMLファイルとメタデータファイルを出力するPythonスクリプトです。公開用のHTMLファイル、JPCOARスキーマのXML、JaLCのXMLファイルを一括で出力することができます。これらをWebサーバーにアップロードすることで機関リポジトリを構築することができます。公開ファイルは静的ファイルだけで構成されるため、Webサーバでのセキュリティの問題が発生する可能性は極めて低いと考えられます。また、動作がシンプルなので意図しない動作が起こる可能性も低いです。
機関リポジトリの役割を考え、必要な機能は何かを私たちと一緒に考えてみませんか?