愛知大学 家禰ゼミ with 怪異情報学創発プロジェクト
都市伝説の情報変容を読み解く
―発祥・変容・時代背景と記録化・公開倫理―
共通方法論・分析枠組み / 学生12名による有名都市伝説の比較レポート&論文(怪異情報学創発プロジェクト)
取り組みの概要
本年度の家禰ゼミでは、「都市伝説の情報変容を読み解く」をテーマに調査を行っています。学生12名がそれぞれ1件ずつ担当する12件に、「怪異情報学創発プロジェクト」が取り上げる12件を加え、計24件の都市伝説について、その発祥、変容、時代背景、情報学的特徴を共通の枠組みで調査・比較します。
この取り組みでは、都市伝説を単なる「怖い話」としてではなく、口コミ、出版物、テレビ、インターネット、SNS、動画など、時代ごとのメディアを通して記録・編集・拡散・再利用されていく「情報」として捉えます。都市伝説が、メディア環境の変化とともにどのように姿を変え、人びとの間に広がってきたのかを明らかにする試みです。
あわせて、家禰ゼミから派生した「怪異情報学創発プロジェクト」では、東三河地方に残る地域伝承について研究しています。地域に伝えられてきた物語が、デジタル環境のなかでどのように再話され、新たな名称や意味を与えられ、検索可能な情報へと変化していくのかを考察します。
本展示では、家禰ゼミと怪異情報学創発プロジェクトによる24件の都市伝説の比較調査と、怪異情報学創発プロジェクトによる東三河の地域伝承研究を紹介します。これらを通して、怪異・伝承・都市伝説を「情報の生成・変容・記録・流通」という図書館情報学の視点から読み解きます。
1. ねらい:都市伝説を情報として読む
- 学生12名と怪異情報学創発プロジェクトが、有名な都市伝説について「発祥・変容・時代背景」を調査する。
- 本ポスターでは、個々の都市伝説を単なる怖い話ではなく、媒体を通じて変形・再流通する情報現象として扱う。
- 真偽の判定ではなく、どのように語られ、記録され、検索され、再利用されるかを検討する。
- 怪異情報学創発プロジェクトでは、東三河地方の地域伝承が、デジタル環境でどのように再話・ラベリングされ、検索可能化されるかを分析し、論文化する。
2. 共通分析項目
| 項目 | 問い |
| 発祥 | どの地域・媒体・時期に現れたとされるか。 |
| 初期形 | 初期の登場人物・場所・結末は何か。 |
| 変容 | 時代や媒体により何が変わったか。 |
| 時代背景 | 社会不安、技術、学校文化、流行とどう関わるか。 |
| 媒体 | 口コミ、雑誌、新聞、テレビ、掲示板、SNS、動画のどれか。 |
| 情報学的観点 | 記録化、検索可能性、拡散、再利用、公開倫理をどう見るか。 |
3. 情報変容モデル
| 段階 | 内容 |
| ①発生 | 体験談・噂・創作・伝承が初期形をつくる。 |
| ②媒介 | 口コミ、印刷物、放送、ネット、SNSで伝わる。 |
| ③編集 | 怖さ、教訓、場所、人物像が語りやすく加工される。 |
| ④変容 | 地域化、学校化、デジタル化、キャラクター化が起こる。 |
| ⑤記録化 | 書籍、新聞、Web、レファレンス、授業資料に残る。 |
| ⑥再利用 | 研究、展示、教育、地域文化、情報リテラシー教材に使われる。 |
4. 比較の視点
- 同じ都市伝説でも、地域・世代・媒体によって細部が変化する。
- 「どこで起こったか」より、「なぜその時代に語られたか」を重視する。
- インターネット以後は、検索・引用・転載・動画化により変容が加速する。
- デジタル時代の都市伝説は、怖さだけでなく、情報リテラシー教育の素材にもなる。
5. 記録化と公開倫理
| 確認事項 | |
| 出典 | 初出・引用元・参照日・媒体種別を明示する。 |
| 表現 | 「実在する」ではなく「語られている」と書く。 |
| 安全 | 危険地・廃墟・私有地への誘導を避ける。 |
| 尊厳 | 事件・災害・死者を娯楽化しない。 |
| 風評 | 地域・学校・施設・個人を不当に傷つけない。 |
| 教育性 | 恐怖消費ではなく、情報の変化を考察する。 |
6. 学生レポートとの接続
- 学生カードの12件と怪異情報学創発プロジェクトカードの12件を同一フォーマットで比較する。
- 各カードは「発祥/変容/時代背景/情報学的観点」の4点に統一する。
AI生成イメージ:日本の都市伝説たち24件
以下の画像は、本展示で扱う24件の都市伝説を、各事例の代表的な語りや特徴をもとにAIで視覚化したイメージです。歴史的資料・実写資料・伝承の原形を示すものではありません。都市伝説には地域・時代・媒体による異版があり、画像はその一つの視覚的表現として作成しています。
AI生成画像/研究内容の理解を補助するイメージ図
AI生成画像/研究内容の理解を補助するイメージ図
AI生成画像/研究内容の理解を補助するイメージ図
印刷用(A4)日本の都市伝説たち24
有名都市伝説24件の情報変容比較
本展示で取り上げる24件の都市伝説について、「発祥」「変容」「時代背景」「情報学的観点」の4項目から一覧比較しました。あわせて、各事例を厳密な発生年代ではなく、主として流通・変容を支えた媒体環境に着目し、①口承・学校文化による反復と定型化、②学校怪談の全国化とマスメディア共有、③匿名掲示板・転載による再編集と保存、の3期に整理しています。
家禰ゼミ学生・怪異情報学創発プロジェクト
都市伝説の情報変容レポート―24事例統合版―
本資料は、本展示で取り上げた日本の都市伝説24件について、発祥、変容、時代背景、情報学的考察を共通の枠組みで整理した統合レポートです。各事例には、まとめ、参考資料・出典、展示用要約を付し、発生年代の古い順に掲載しています。
ポスター本体では24件を一覧比較し、本PDFでは、それぞれの都市伝説がどのような媒体を通じて語られ、記録され、再編集されてきたのかを詳しく紹介しています。
PDF:都市伝説の情報変容レポート―24事例統合版
※本資料は都市伝説の真偽を判定するものではなく、資料上確認できる記録や再話をもとに、その情報変容を考察することを目的としています。
研究ノート
日本の都市伝説にみる情報変容とメディア環境
―24事例の発祥・変容・時代背景・検索可能性の比較分析―
家禰ゼミ(赤木 佑羽,天野 僚太,石山 葉菜,加藤 琳音,小塚 菜々子,諏訪 功介,津波古 渚,寺部 玖美,西浦 菜々美,原田 結那,安井 菜々子,山本 一菜),怪異情報学創発プロジェクト(小田 七実,家禰 淳一)
抄録
本研究ノートは,日本で流通してきた都市伝説・学校怪談・ネット怪談から比較対象として選定した24件を対象に,発祥,物語内容の変容,時代背景,媒体,検索可能性,記録化,公開倫理の観点から比較分析したものである。分析の結果,学校・口承を中心とする伝播から,新聞・雑誌による広域化,さらに匿名掲示板・投稿サイト・動画・SNSによる再編集と保存へという媒体環境の重層化が確認された。また,名称や決まり文句,場所,外見,擬音などの「検索可能な識別記号」が,異版の再発見と定型化に関係することが示唆された。都市伝説を情報文化として捉え,変容そのものを記録対象とする必要性を示した。
キーワード:都市伝説,怪異情報学,ネットロア,情報変容,デジタルアーカイブ
論文
東三河の地域伝承は現代都市伝説としていかに再話されるのか
―デジタル環境における再話・ラベリング・検索可能化の図書館情報学的分析―
怪異情報学創発プロジェクト
(小田七実,家禰淳一)
抄録
本稿は,東三河地方に残る地域伝承が,現代のウェブ環境でどのような語彙・表示形式を伴って再話されているかを,異時点・異媒体の記述差として図書館情報学の立場から分析する。対象は,新城市の信玄塚,設楽町の田峯城内乱の首塚,豊川市の豊川稲荷・霊狐塚,田原市の田戸神社の四事例である。各事例について,地域史・文化財・図書館レファレンス等に記録された旧来の伝承層,自治体・観光機関による制度的再記述層,心霊・パワースポット系ウェブサイト等の現代的再話層を比較した。その結果,四事例の現代的再話では,①固有の歴史文脈の圧縮,②条件―結果型の行動規則化,③幽霊・金運・祟り等の検索語へのラベリング,④媒体によっては評価・コメント・動画等を伴う表示・分類が確認された。ここでいう「変容」は,異時点・異媒体の資料間に確認される記述差を示す分析語であり,明示的な引用・参照関係がない場合に一方から他方への因果的・系譜的派生を意味しない。図書館が地域怪異情報を扱う際には,真偽判定のみで整理するのではなく,原伝承・現代的再話・媒体・作成主体・時点・出典関係を分離して記述し,異なる版を相互にたどれるプロヴェナンス情報を保持する記述案を提示する。
キーワード:現代都市伝説,地域伝承,ネットロア,プロヴェナンス,地域資料
考察―都市伝説を「情報」として捉える―
24件の比較から、都市伝説は、物語の内容だけが変化して伝わるのではなく、口伝、新聞・雑誌、書籍、テレビ、匿名掲示板、投稿サイト、動画、SNSなど、その時代のメディアを移動するなかで、編集・再記述・保存・再利用されてきたことが見えてきた。とくにデジタル環境では、名称、場所、決まり文句、外見、擬音などが「検索可能な識別記号」となり、異なる時期や媒体の語りを結びつける一方、転載や再編集によって初出や出典関係が見えにくくなる場合もある。
東三河の地域伝承4事例でも、現代的な再話では、歴史的文脈の圧縮、条件―結果型の行動規則化、「幽霊」「祟り」「金運」など検索されやすい語彙へのラベリング、Web媒体に応じた表示・分類が確認された。都市伝説と地域伝承には成立過程の違いがあるものの、いずれもメディア環境のなかで記録され、検索され、再利用される「情報」として捉えることで、その変化を共通の視点から検討することができる。
このことから、図書館情報学にとって重要なのは、怪異情報の真偽を一括して判定することではなく、いつ、どの媒体で、誰によって、どのように記録・再話されたのかを区別して残すことである。原伝承・初期記録・現代的再話を相互にたどれるよう、媒体、作成主体、時点、出典関係などのプロヴェナンスを保持することが、怪異・伝承・都市伝説を地域資料・情報資源として扱ううえで重要になる。
なお、本展示でいう「変容」は、異なる時点・媒体の資料間に確認される記述の差を示す分析上の概念であり、明示的な引用・参照関係が確認できない場合まで、因果的・系譜的な派生関係を意味するものではない。
会場配布資料:都市伝説の情報変容を読み解く(A4両面)
リアル会場で配布するA4両面資料です。展示の概要、24件の都市伝説比較から見えてきたこと、東三河4事例の分析、図書館情報学への示唆を2ページにまとめています。
会場でご覧になった方の振り返りや、オンライン版の概要資料としてもご利用いただけます。
PDF:会場配布資料(A4両面)
本のしおり(怪異情報学創発プロジェクト)
色上質紙に印刷して、点線を切ってお使いください。
本のしおり(わくわくおたのしみブック)
これまでの家禰ゼミの取り組み(ポスターセッション・アーカイブ)
「わくわくおたのしみブック」の企画
「わくわくおたのしみブック」は、2021年度から2025年度まで実施した読書推進企画です。2026年度は、会場である「こども未来館ここにこ」の改装休館により実施していません。
家禰ゼミの活動としてスタートし、その後、山本ゼミ、愛知大学豊橋図書館学生サポーター「ALICe」が加わり、「おたのしみブックプロジェクト」として展開してきました。
本はタイトルや表紙が見えないようにラッピングし、包みには内容を想像させる短い紹介文だけを添えます。どの本が入っているかは、開けてみるまでわかりません。
普段なら自分では選ばない本との偶然の出会いを生み出し、そこから新しい興味や読書の世界が広がることが、この企画の大きな特徴です。
5年間の実践記録とアンケート結果に加え、他の図書館や書店の取り組みも視野に入れ、その成果を論文として公表しました。
【論文情報】
小田 七実,花里 千賀子,家禰 淳一「制度化された偶然性としてのブラインド・ブックス:図書館実践と情報行動論的意義に関する研究」Journal of I-LISS Japan, 8(2), pp.26–42, 2026年5月10日
★2025年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2025/273
★2024年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2024/204
★2023年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2023/135
★2022年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2022/68
★2021年度 ポスターセッション https://www.libraryfair.jp/poster/2021/1-0