2023年は、いわゆる「中小レポート」から60年目に当たる年である。
すなわち、1963年に日本図書館協会が出版した中小公立図書館運営の指針である『中小都市における公共図書館の運営』 から60年になる。このレポートでは公共図書館の本質的機能は資料を求めるあらゆる人々やグループに無料で資料を提供することとしたのである。しかし、今日では「貸出中心主義」は相当程度に制度疲労を起こし、利用者からは新しい「公共図書館像」が求められている。
また、2013年にカルチュア・コンビニエンス・クラブが初めて指定管理者となって佐賀県の武雄市図書館を開館してからちょうど 10年になる年でもある。「滞在型図書館」への転換という意味で象徴的な意味をもつ「武雄市図書館」は公共図書館の世界に何をもたらしたのであろうか。
2014年に電子図書館をスタートさせていた札幌市が2018年にオープンした「札幌市図書・情報館」はあえて本の貸し出しを行わず、常に最新の情報にアクセスできるまちの情報拠点として設置された。同館は、直感的に必要な情報を探せる「テーマ別配架」、ワークスペースの充実、年数十回のトークライブの開催、専門家への個別相談機能など「場がある意味、司書がいる意味」を追求した 滞在型図書館として5年経った今も遜色ない利用者数を数え、新設やリニューアルを考える図書館からの視察が絶えない。
一方、2020年から2023年にかけての新型コロナウイルス感染症拡大下、公共図書館における電子図書館サービスの導入も急速に進展した。図書館流通センター(TRC)では、2023年9月1日現在で同社の電子図書館システムが全国355自治体にて導入されている。公共図書館における「貸出型図書館」から「滞在型図書館」への移行、「紙媒体中心」から「紙と電子のハイブリッド」という歴史的転換が公共図書館の世界に現出していることは明らかであろう。
そこで本フォーラムでは、公共図書館における「滞在型図書館」「電子図書館」の実践事例を紹介し、その可能性を探求し、「来館者数や貸出冊数」だけではない公共図書館の新たな評価指標を地方公共団体の総合計画と関連づけて検討する。
【登壇者】
ゲスト
淺野隆夫氏(札幌市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト担当部長/札幌市中央図書館調整担当部長)
高橋聡氏(カルチュア・コンビニエンス・クラブ 公共サービス本部長)
谷一文子氏(株式会社図書館流通センター代表取締役社長)
コーディネーター
湯浅俊彦(追手門学院大学 国際教養学部教授/図書館長)
登壇者:淺野隆夫氏(札幌市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト担当部長/札幌市中央図書館調整担当部長)/高橋聡氏(カルチュア・コンビニエンス・クラブ 公共サービス本部長)/谷一文子氏(株式会社図書館流通センター代表取締役社長)
コーディネーター:湯浅俊彦(追手門学院大学 国際教養学部教授/図書館長)